発達とは?
発達とは、からだ・精神が年月とともに成長して、より完全な形やはたらきをもつようになる
ことです。
人間の精神は、認識する(ものごとの意味を理解する)ことと、関係を作り保つ(社会性を持つ)ことの2つが軸となって発達します。人間という動物が生きている「世界」とは、人間同士が関わりあってできているものだからです。
人間が「世界」の中で生きるためには、
- 人と関わる中で、まわりの世界のものごとや決まりの意味を理解すること
- まわりの世界のものごとや決まりの意味を理解して、人と関わること
の両方が必要です
発達障害とは?
発達障害は、正式には「神経発達症」という病気に分類されます。「神経発達症」とは、上述した「認識すること」と「関係を作り保つこと」の発達に、全体的または部分的な遅れがある状態です。そのため、得意なことと苦手なことの差が大きい、つまり、【でこぼこ】が大きい状態です。
【でこぼこ】が存在する理由は、生まれつきの脳の働き方にあります。親の育て方やしつけの影響で起こるわけではありません。
【でこぼこ】があること自体は、病気ではありません。程度の差はありますが、だれにでも【でこぼこ】はあるものです。【でこぼこ】が大きくても、自分もまわりの人も困っていない場合には、そもそも病院にくることはありません。
しかし、【でこぼこ】が大きく、そのために学校・仕事・人間関係など生活で困ることが多い場合、病院で診断を受け、必要なサポートを受けることができます。
具体的にはどんな病気がある?
ここでは「神経発達症」に含まれる病態のうち、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、限局性学習障害について簡単に説明します。これら複数の病態をあわせもっている人もいます。
自閉スペクトラム症(ASD)
まわりから自分に入ってくる情報の受け止め方に質的な障害があります。
そのため
- ことば、表情、身ぶりから相手の気持ちを読み取ることが苦手
- 自分の気持ちを伝えることが苦手
- コミュニケーションができない
- 興味を持つもの・持たないものがはっきりしすぎている
- こだわりが強い
- 感覚に敏感または鈍感で、特定の音・肌触り(衣類)・舌触り(食べ物)を極端に好む、または嫌う
などの症状があります。100人に1人は自閉スペクトラム症であると報告されています。
「スペクトラム」という言葉が示しているように、症状の程度には、とても広い幅があります。アスペルガー症候群とは、知的障害がないが発達の【でこぼこ】のため社会生活に支障がある場合に診断されていた病名です。国際的な疾患分類が変更され、現在は「自閉スペクトラム症」に含まれるようになっています。
注意欠如多動症(ADHD)
注意力と衝動のコントロールがうまくできない状態です。
- 落ち着きがない、じっとしていられない
- 整理整頓できない
- よく物を忘れる、なくしてしまう
- 待つことができない
- 衝動的に行動する
- 注意を続けることが苦手
- 順番をつけたり優先順位を考えたりして行動できない
などの症状が12歳になる前からあり、学校でもおうちでも困っているときに診断されます。
限局性学習障害
学習面の特定の能力に障害がある状態です。読み書き能力や計算力などの算数機能に障害があり、その分野だけできない特異的な発達障害のひとつです。早めに診断し、能力に応じた学習支援が必要となります。
知的障害と発達障害は何が違う?
知的障害とは、正式には「知的能力障害」のことで、「神経発達症」に分類されます。冒頭で説明した「認識すること」の発達が全体的に遅れている状態で、「精神遅滞」と表現されることもあります。論理的に考える・決断する・計画する・解決する・学習することに、難しさがある状態です。知的障害は、発達障害の症状と一緒に存在することも、しないこともあります。
発達障害は何歳で診断される?
それぞれの子どもによって、診断がつく年齢はちがいます。保護者やまわりまわりの人がその子どもの社会性の問題を疑う点が多い、また困っていることが多いほど、早く診断される傾向があります。
知的障害がある場合や、【でこぼこ】による症状が重い場合には、社会性の発達が評価しやすくなる1歳半~3歳頃に乳幼児健診で疑われ、その後、小児科医による評価を経て診断に至ります。言葉が遅い、他人に関心を示さない、同い年の子どもと遊べない、などがきっかけで見つかることが多いです。
一方で、幼少期に診断されない場合もあります。幼少期に、大きなことばの遅れがなく、保育園や幼稚園など集団生活で大きな問題がなかった場合、また、知的障害を伴わない場合には、その子どもの能力を社会的需要が越えるまで障害・症状がわかりづらいことがあります。この場合には、小学生や中学生以降に診断されることがあります。
社会的需要とは、「まわりの環境がその子どもに求めるもの」です。一般的に、年齢と知的発達レベルにより、「求められるもの」、つまり、「日常生活で年齢相当としてやるよう期待されること」はどんどん増えていきます。
たとえば、小学校に入学すると
- 家から学校に自分で通う
- 集団で授業を受け、授業中は座っている
- 他人のものをとったり、勝手に使ったりしない
- 時間割をそろえる
- 身だしなみを整える
- 学校の宿題をする
- 学校の行事を参加する
- 家族以外の人(先生や同級生)と交流する
などが求められます。中学生になると、さらに、部活動や試験が課され、友人関係が複雑になり、親の助けを借りずに自分一人でやるよう期待されることが増えます。
このように、社会的需要が高まり、その子どもの能力では対応できなくなったときに、生活面での不調や困りごと(たとえば不登校や家庭内暴力、こころの不調)が増え、それがきっかけで病院に来て、診断されることがあります。
発達障害は親が診断できる?
「発達障害」ということばが、最近広く知られるようになり、ネット上にも、自覚症状をチェックする「チェックリスト」などがあふれています。実際に、大人が「自分は発達障害だと思う」と病院に来ることも少なくありませし、実際には発達障害ではない大人が「私アスペルガーだから」「自分はADHD」など言っていることも少なくありません。
しかし、診断はそんなに簡単ではありません。似たような状況を作り出す、他の病気もあります。また時間をかけて様子を観察しないと診断ができないこともよくあります。自分で思い込むのではなく、専門の医師に相談してください。
発達障害は治療できる?
生まれつきの脳の働き方が原因なので、「完全に症状がなくなって治る」というものではありません。一生付き合っていくものです。お子さん自身が自分の【でこぼこ】を理解し困りごとを減らす工夫をする、家族・周りの人が【でこぼこ】を理解して助ける、本人にとって心地よい環境を作ることが大切です。
発達障害のある人は、精神疾患にかかるリスクが高い
発達障害がある人は、そうでない人と比べて、生活の中で「生きづらさ」を感じることが多いです。そのため、ストレスがたまりやすかったり、ストレスにうまく対応できなかったりして、うつ病、不安症、物質依存症などの精神疾患になるリスクが高いことが分かっています。「生きづらさ」をいかに減らせるか、家族とお子さんが一緒に考えることが大切です。
お子さんに、次の症状があるときは、病院(小児科、精神科)へ相談してください。
- 子どもが発達障害なのではないかと思う
- 学校生活や家庭生活がうまくいかず、苦しんでいる
- 人とコミュニケーションがうまくとれず、トラブルになることが多い
- 落ち着くことができず、勉強などに全く集中できず困っている
参考文献
- DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引.医学書院.
- 厚生労働省.eヘルスネット.
- 滝川一廣.子どものための精神医学.医学書院.